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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツアカデミー2012 第10回

第10章 スポーツの行政機構と施策

横浜国立大学 教育人間科学部 海老原 修先生

横浜国立大学 教育人間科学部
海老原 修先生

3月14日、第10回目となるスポーツアカデミーが開催されました。今回は、「スポーツの行政機構と施策」をテーマとして、笹川スポーツ財団スポーツ政策研究所主任研究員の澁谷 茂樹がデータ解説を行い、海老原 修 先生(横浜国立大学教授)に総括コメントをいただきました。

データの解説パートでは、澁谷がわが国のスポーツに関する施策の基本として2011年に制定された「スポーツ基本法」に基づく、国と自治体におけるスポーツ行政体制の現状や、同法の理念を具現化する計画として2012年に策定された「スポーツ基本計画」の内容などを説明しました。スポーツ基本法の解説では、前身の「スポーツ振興法」(1961年)からの大きな変更点のひとつとして、前文に「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」としていわゆる「スポーツ権」があらゆる国民に保障されることを国が明示したことなどを指摘しました。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 主任研究員 澁谷 茂樹

笹川スポーツ財団
スポーツ政策研究所 主任研究員
澁谷 茂樹

また、自治体におけるスポーツ行政については、都道府県や市区町村のスポーツ行政部署が「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の第23条に基づいて、主に教育委員会におかれてきたものの、2007年の同法の改正(第24条「職務権限の特例」)により、教育委員会から首長部局に移管する自治体が増えていることなどを紹介しました。さらに澁谷は、今後、自治体のスポーツ振興担当部署においては、スポーツ基本法の第十条の定めにより、「地方スポーツ推進計画」の策定が進められることが予想される中、計画の策定にあたっては過去の計画や施策の検証に基づいた検討が不可欠であると指摘しました。また、「具体的な目標とその達成につながる事業の立案」「総合計画の内容との整合性」に配慮することも重要との視点を示しました。

総括のパートでは、海老原先生が「スポーツ的価値より学校教育や一般社会の価値が上回る場合もあれば、スポーツ的価値が学校教育や一般社会の価値を上回る場合もある」など、スポーツとそれを取り巻くわが国の社会、制度のありかたについて考察する際に留意すべきいくつかの視点を示されました。

最後に質疑が行われ、指定管理者制度導入の評価に関して参加者と海老原先生、澁谷との間で質問・意見が交わされました。その後、予定の時間を迎えて終了いたしました。