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国際情報
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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツアカデミー2019 第2回

「引退なし」「歯磨き感覚」「補欠ゼロ」の運動部活動を目指して
~スポーツに「遊び心」を取り戻せ~

スポーツアカデミー2019・運動部活動シリーズ
講師
中塚 義実 氏(特定非営利活動法人サロン2002 理事長、筑波大学附属高校教諭)
会場
笹川スポーツ財団(SSF)会議室
畑 喜美夫 氏

中塚 義実 氏

主な講義内容

部活動を取り巻く環境が大きく変わる中、筑波大学附属高校で33年に及ぶ教員生活を送る中塚氏がU-18サッカーリーグ「DUO リーグ」の取り組みなどを紹介しながら、だれもがスポーツを楽しめる環境づくりを提案する。

1.日本の学校体育の長所と短所

(1)長所
日本の学校体育には世界に誇れる長所がある。小中高等学校で12年間にわたり体育実技の場が保障されている。
運動会などのスポーツイベントもあり、放課後には校内の体育館やグラウンドで部活動ができる。部活動は全国的な競技会もあり、地域社会の誇りとなり、卒業生の絆も深い。

(2)短所
体育とスポーツが混同され、スポーツを楽しむ姿勢に欠ける。競技会への参加単位であるチームが優先されてクラブが育たない。
チームは学年ごとに編成され、選手は最後の大会が終わると“引退”してしまう。「アマチュアに引退なし」のはずなのに。

2.DUO リーグ(サッカー)

(1)成り立ち
負ければ終わりのノックアウト方式の大会しかなく、高校生の真剣勝負の場は年数回の公式戦のみであった。さらに1校1チームの制約下では多くの補欠選手が生まれる環境であった。
そうした状況打破のため、1996年4月、東京都内の運動部活動とクラブユースの計6クラブで始まったリーグである。
「歯磨き感覚」「引退なし」「補欠ゼロ」の理念を掲げ、負けたら終わりのカップ戦ではなく、どのチームも多くの試合ができるようにリーグ戦形式にした。
試合に出場できないプレーヤーが生まれないように1つの学校(クラブ)から複数のチームが参加可能としている。特別枠を設け、卒業生や教員も出場できるようにした。
カップ戦は会場審判などを主催者が用意するが、リーグ戦は各チームで用意する。大会を自分たちでマネジメントすることにより、クラブの文化が育つ。クラブから近隣でリーグを作り、底辺からの組織化を試みた。

(2)発展
DUO リーグの理念が徐々に広まり、他の地域でもリーグ戦が生まれた。
その後、紆余曲折を経て、日本サッカー協会主導で2011年、頂点の「高円宮杯JFAU-18サッカープレミアリーグ」から底辺の「DUO リーグ」までつながるU-18世代のユースサッカー構造ができあがった。

DUO リーグの理念

  1. 「歯磨き感覚」「引退なし」のスポーツライフの生活化
  2. 「補欠ゼロ」のゆたかなクラブ育成 ―チームからクラブへ
  3. 強いチームとたくましい個の育成 ―レベルアップ
  4. サッカーをささえる人材の育成 ―自主運営と受益者負担

(3)課題
DUO リーグの当初の理念にあった遊び心(スポーツマインド)が時代の変化により失われていった。
互いの顔が見えにくくなり、新旧メンバーの間に意識のズレも生じるようになった。コミュニケーションの質と量が変わり、ソーゾー(想像・創造)力や決断力の欠如も顕著になってきた。

(4)取り組み
DUO リーグの持ち回りトロフィーが紛失したのをきっかけとして、遊び心を回復するためにスポーツとアートを融合するプロジェクトに取り組んだ。
アーティストの協力を得て、履けなくなったスパイクから革をはがし、それをつなぎ合わせてトロフィーを作った。革の部分を取り除いた靴底をサンダルにするなどのワークショップも開いた。

3.学校運動部のクラブ化

筑波大学附属高校蹴球部は競技志向の11人制サッカー部、プレイ志向のフットサル部、女子蹴球部の3つのチームに加え、卒業生も活動している多世代型のクラブとなっている。生徒が企画してだれもが参加できる校内フットサル大会を運営するなどクラブ文化を培った。

ディスカッション:主なやりとり

Q.(フロア)学校運動部のクラブ化について、校内でサッカー部以外のクラブへの広がりはあったのか。 こうした文化をどうやって地域に根付かせようとしているのか。
A.

(講師)校内の広がりに関しては元からそうする風土があり、サッカー部が始める前からテニス部が校内大会を開き、サッカー部に続いてバレーボール部、バスケットボール部が校内大会を開いた。
ただし、各部が開催した校内大会のシーズンが重なるなど相互の意思疎通は不十分。筑波大学附属は、附属小学校から朝に体操服に着替えて1日中動き回る文化があり、スポーツを楽しむムードがもともとあった。
地域への広がりは残念ながらあまりない。生徒は(その地域に住んでいるのではなく)いろいろな地域から通ってくるという事情もある。一方で卒業生とのつながりはものすごく強い。

Q.(フロア)54歳まで中学教員を勤めてきた。年度初めの4月に、部活動の顧問を依頼し断られる経験をしてきて、部活動の在り方に限界を感じていた。 部活動をどうやって地域に移行していくのか。日本全国でこうすればいいという構想があれば教えてほしい。
A.

(講師)理念でしかないが、引退をなくせばいいと思う。卒業したOB、OG が気軽に来られるような形で学校の再構築ができればいい。学校に体育施設があるのだから、そのリソースを活かさない手はない。
その学校で学校生活を送った卒業生の方が、異動の可能性がある教員よりも思いが強く、卒業生のノウハウを活用していくことにより、持続可能な部活動の一つの形が提示されるのではないかと考える。

Q.(フロア)ITの発展で想像力を働かせなくても最先端の答えが分かりつつある時代の中で、どうやって子供たちの想像力を育んでいくのか。 IT、スマホといった世の中の変化をどうとらえて、どのような取り組みをしているのか。
A.

(講師)そこが一番悩んでいるところである。IT の素晴らしさは認めつつ、フェイス・トゥ・フェイスに立脚したところからスタートする、というのが現時点の考え。社会が変わっていったとしても最後は人と人だと思う。