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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツアカデミー2016 第1回

2020年東京オリンピック・パラリンピックと地方創生

2016年度の第1回スポーツアカデミーが2016年6月28日開催されました。
今回は野村総研コンサルティング事業本部パートナーにしてJOCマーケティング委員などをお務めの三﨑 冨査雄 氏にご講義いただきました。

【当日の概要報告】

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

野村総合研究所 三﨑 冨査雄 氏

野村総合研究所 三﨑 冨査雄 氏

主な講義内容

現在、多くの自治体が2020年東京オリンピック・パラリンピック(2020年東京大会)により、何らかの効果を地元にもたらそうとさまざまな取り組みをしている。実際にどのような取り組みをしていて、どのような取り組みに効果が期待できるのか。2012年のロンドン大会を参考に、地域におけるオリンピックの生かし方を考察する。

1. 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた全国の地方自治体の取り組み

地方自治体の取り組みは、主にオリンピック・パラリンピック開催期間中の訪日外国人観光客の誘客、各国選手団の事前キャンプの招致が2本柱になっている。

(1)訪日外国人観光客の地方への誘致
ロンドンの例を見ると、大会開催期間中の訪英外国人観光客の数は前年比で減っている。これは宿泊費も飛行機代も高いオリンピック期間中は旅行を自粛したためと考えられる。2020年東京大会でも訪日外国人観光客の数は減ることが予想され、東京に観戦に来た人が地方に観光に行くというケースはさらに期待できない。
一方で、ロンドンあるいはイギリスは、2012年ロンドン大会を通じてブランドイメージが高まり、2012年以降は観光客と訪英外国人の消費額が増えた。

(2)各国選手団の事前キャンプの誘致
自治体は事前キャンプ招致のメリットを経済効果と国際交流に求めるが、サッカーの2002年日韓ワールドカップでは、自治体が負担したコスト以上の経済効果が得られたという事例は生まれなかった。また大会を目前とした各国選手たちが地域住民との交流を練習よりも優先するということも期待できない。大会後に交流が継続している例もあまり多くない。大会後に事前キャンプに招待した国の観光客が来るという期待も、過去の例を見るとかなえられない可能性が高い。

2. オリンピックがもたらす経済波及効果

(1)内需けん引型から外需誘引型へ
2012年ロンドン大会は全体で7兆円の経済効果(粗付加価値)をもたらすと試算されている(2004年~20年)。大会前が2.8兆円、大会後が4.2兆円。経済効果のもっとも大きいところは貿易と対外投資の増加分。イギリスの企業が大会を通じて海外との貿易を増やし、海外の投資家による対英投資の額が増えた。これが経済効果の約半分を占める。
新興国での大規模国際スポーツイベント開催の経済効果は、インフラ投資やそれに伴う生産性の向上などによる部分が多いため内需けん引型といえるが、成熟国の場合は国内企業の海外進出を促し、海外からの直接投資を呼び込む外需誘引型となることが望ましいと思われる。

(2)英国流もてなし法BBE
イギリスは貿易投資総省(UKTI)の主催で「The British Business Embassy」(BBE)を開催。期間はオリンピック開会式前日から18日間で、世界各国の経営者や投資家、政策決定者らを招待し、イギリス企業の海外展開や対英直接投資をPRした。キャメロン首相をはじめ多くの閣僚が参加し、最高級のもてなしを行った。大会後は、各国から投資が集まるなど、2014年4月時点で約2.2兆円の経済効果が得られたとされる。

3. まとめ

2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることにより、世界中の関心が日本に集まり、世界のVIPが日本を訪れる。このチャンスを逃す手はない。今、日本政府もBBEを参考に、ジャパン・ビジネス・カンファレンスを開催しようとしている。同じように地方においても地方版のリージョナル・ビジネス・カンファレンスを開催し、地方単位でトップセールスを行うのも一つのアイデアといえる。2020年に日本を訪れる観光客や、事前キャンプの誘致だけでなく、それ以降の投資、経済のつながりを広げていくというところまで考え、戦略を練るべきではないだろうか。

ディスカッション:主なやりとり

Q.(フロア)事前キャンプを誘致している自治体は、どこの国でもいいからとにかく呼びたい、というところが多い。成功、失敗のカギはどこにあるのか。
A.

(講師)もともとその国と関係のある自治体はキャンプの誘致により、前から続いている関係が一層よくなることがある。何の関係もなく、いきなり呼ぶ場合は、なかなか続かないケースが多いようだ。国際交流とか経済効果に過度に期待せず、選手たちが気持ちよく競技に参加してもらえるよう協力してあげよう、という気持ちで事前キャンプを招致するのであれば、結果として成果につながるのではないかと思う。

Q.(フロア)ロンドンではリージョナル・ビジネス・カンファレンスは開かれたのか。
A.

(講師)開催された事実は把握していないが、イギリスの地方企業がBBEに参加して、海外との取引を増やした例があった。少なからず効果があったと考える。日本版BBEでもその可能性がある。

Q.(フロア)経済の分野だけでなく、環境や社会文化へのインパクトという観点だと、ロンドンでは地方に何らかの効果はあったのか。
A.

(講師)イギリスでオリンピックが地方にもたらした効果を何人かにヒアリングした際、「地方に文化的なものを含めて何か顕著な効果があったか」との問いには「あまりなかった」という回答がほとんどだった。オリンピックに向けてイギリスでは地方でもいろいろなイベントが開催されたが、その影響がどれほどあったかとなると、なかなか難しいと言わざるを得ない。

以上