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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

東京2020大会の次に来るもの

SPORT POLICY INCUBATOR(18)

2022年7月13日
遠藤 利明(衆議院議員)

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は新型コロナウイルス感染の世界的な蔓延によって史上初めて1年延期、無観客での開催でした。さまざまな制約があるなか、選手たちの活躍や組織委員会スタッフ、ボランティアの尽力、協力を得て大きな成果をあげることができました。

 大会の運営経験、ボランティアを含めた人材の活躍は今後の日本スポーツ界にとって大きな財産となります。こうした「オリンピックレガシー」をいかに後世に伝え、活かしていくか、知恵を絞っていかなければなりません。

 ポスト東京2020は、スポーツ界が社会変容を起こす政策を実施していくことが重要です。東京大会までは選手強化が最重要課題でした。2年後のパリ大会、2026年に愛知・名古屋で開くアジア大会を考えれば継続は当然ですが、より重視していかなければならないのが地域スポーツ政策です。オリンピックレガシーでもある健康長寿社会の実現には、地域のお年寄りから子どもたちまでがスポーツに親しみ、スポーツする環境づくりを最重要課題として取り組んでいく必要があります。

 スポーツ庁の組織改革に伴い、地域スポーツ課を創設しました。「運動部活動改革」や「幼児期運動指針の策定」に取り組み、「総合型地域スポーツクラブ」「スポーツ少年団」「大学スポーツ」を支援し、日本スポーツ協会(JSPO)と一緒に子どもたちの発達に応じた運動プログラムの開発、普及を担当します。地域のお年寄りから子どもたちがスポーツに親しむ仕組みづくりを担う部署です。

 部活動はこれまで、「部活」から「地域」を考えてきましたが、少子高齢化社会を迎えたいま、「地域」から「部活」を考える事が重要となるでしょう。

 例えば施設問題です。地方には施設がないと言われてきました。では、公立の小中学校の体育館やグラウンドを自治体の管理にゆだねてみてはどうでしょう。自治体は「総合型地域スポーツクラブ」や「スポーツコミッション」に施設管理と運営を委託し、学校に朝7時から夕方4時まで貸し出します。そうすると、学校で使用する時間以外は民間の活用が可能になります。プールも地域に屋内プールをつくり、一定の時間を学校に貸し出せばいいのです。利用には地域のいくつかの学校で時間割をつくり、送迎バスを使います。授業でプールを使用する時間は年間にどのくらいあるでしょうか。地域スポーツクラブやスポーツコミッションに貸し出した方が、よほど有効な利用法です。そうすれば全国に3万のスポーツ拠点ができます。高校も数えれば35000拠点、地域の有用なスポーツ施設がすぐにもできます。

 部活は、地域スポーツクラブやスポーツコミッションの指導員に指導を受ける形にします。今年から部活の外部委託に向けた運用を試験的に始めていますが、これは「先生方の働き方改革」が大きな目的です。部活に時間を取られる先生や、自分で経験した事のないスポーツ部活の指導に悩んでいる先生はたくさんいらっしゃいます。体育館やグラウンド等の管理もまた、先生方の負担を重くしています。

 だからこそ外部の委託管理制度を導入、地域スポーツクラブやスポーツコミッションに施設管理を委託する事が考えられました。先生たちの負担の軽減です。

 もちろん部活指導に熱心な先生には地域スポーツクラブなどの指導者になって頂いて、能力が発揮できるよう兼職を認める方策も必要です。法整備も求められます。いかに先生のやる気を削がず、負担軽減によって児童、生徒たちと向き合う時間を増やしていくか、大事な視点ではないでしょうか。

 もっとも部活は教育の範疇であり、簡単に外部の人材に託せばいいわけではありません。学校に外部の人をいれる、教育を外部人材に委ねる変化ですから当然、反対、抵抗もでてきます。そこで国がスポーツ指導員なり外部コーチの資格認定制度を創り、法改正も含めて整備していく必要があります。国家資格の指導員がいて初めて、先生方と同じような指導ができるわけです。

 指導者養成には地域の大学の参画も不可欠です。私の地元では国立山形大学のグラウンド整備をしています。山形大学を山形県のスポーツ拠点とし、指導者養成、スポーツ医科学研究の中核と位置づけていく事は重要だと考えます。東京や大阪、名古屋など多くの大学がある都市では特別区ごとに拠点づくりが可能になります。2019年に発足した大学スポーツ協会(UNIVAS)を積極的に活用する事にもなるでしょう。

 こうした政策実現に、財源確保は欠かせません。例えば部活でも、金銭的な負担に耐えられない児童、生徒を支援する資金が必要です。地域スポーツ振興で考えれば施設の維持、管理などに関わる財源も考えなければなりません。

 いま注目しているのがスポーツDX(デジタルトランスフォーメーション)です。すでにビッグデータを活用して戦略にとりいれたり、AI(人工知能)によるトレーニングや育成強化に加え、入場者管理にも変化が起きたりしています。またVR(仮想現実)による観戦形態の変化はスポーツ普及に役立っています。

 そうしたなかでスポーツDXによってビジネスを生み、そこから得た資金をスポーツ界に還流するシステムを創ることができないか、と研究を始めています。具体的にはデータの活用です。DXによって蓄積された個々のデータをビジネスに生かせないかというねらいです。超党派のスポーツ議員連盟では、データ活用の環境整備に向けてデータバンクの必要性についても議論を始めています。

 合わせて、スポーツホスピタリティについての議論も続けています。スポーツ「する」「みる」から、いかに「支える」に導いていくか。財源としての可能性を模索する取り組みです。

 フィジカル・バーチャル・スポーツは、すでに国際オリンピック委員会(IOC)でも議論を重ねており、近い将来、オリンピックに登場するかもしれません。eスポーツと比べて、こちらの仮想スポーツは全身を動かす運動として、トレーニングでの活用も進んでいます。また、「スポーツベッティング」や「スポーツNFT」は未来に大きな可能性を秘めた存在です。ギャンブル依存症などが問題視されていますが、ベッティングやNFT導入にはこうした対策も不可欠ですし、法整備も必要となります。壁はまだまだ高いと言えます。しかし新たな可能性への挑戦こそ、ポスト東京2020の取り組みだと言えるのではないでしょうか。

 今年4月、スポーツ界から横断的な提言をする組織としてスタートした日本スポーツレガシー推進機構を改組し、新たに日本スポーツ政策推進機構(NSPC)を創設しました。スポーツ界で起きている事、考えていかなければならない事に民間の意見を取りこみ、国会のスポーツ議員連盟の議論に反映させるべく意見具申していく組織です。スポーツ界を横断した組織として、存在感を発揮していくのはこれからになります。

 2011年に創ったスポーツ基本法は10年の時を経て、見直しの時期にきました。東京2020大会を契機として、スポーツの未来に向けた政策を踏まえて改正に取り組む事もまた、オリンピックレガシーと言えるでしょう。

  • 遠藤利明 遠藤  利明   Toshiaki Endo 衆議院議員 1950年山形県生まれ。中央大学法学部卒。衆議院議員秘書を経て、1983年山形県議会議員に初当選し、1993年衆議院議員初当選。建設政務次官、文部科学副大臣、衆議院農林水産委員長、東京2020オリンピック・パラリンピック担当大臣など歴任し、現在は衆議院議員9期目、自由民主党選挙対策委員長を勤める。スポーツ分野では自民党スポーツ立国調査会長を勤め、東京2020大会実施本部長、同競技大会組織員会副会長を歴任。スポーツ振興くじの創設、スポーツ基本法の制定などにも尽力。公益財団法人日本スポーツ協会副会長、山形県ラグビーフットボール協会会長他。著書に「スポーツのチカラ」、編著に「スポーツフロンティアからのメッセージ」「スポーツレガシーの探究」など。