2017年度の第1回スポーツアカデミーが8月1日に開催されました。
今回は岡山大学大学院教育学研究科講師の高岡 敦史 氏にご講義いただきました。
【当日の概要報告】
※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。
主な講義内容
スポーツを利用した地方創生が進む中で、地域間競争が激化したり、スポーツの振興とスポーツによる地域振興が必ずしも両立しなかったり、さまざまな課題が持ち上がっている。こうした状況を踏まえ、あるべきスポーツによるまちづくりの姿を、講師自身が携わっている岡山の事例を踏まえながら考える。
岡山大学大学院教育学研究科講師 高岡 敦史 氏
1.スポーツ・プロモーションの構造
(1)まちとスポーツの自分コト化
スポーツでまちづくりをするためには、地域の人たちがスポーツを自分のコトと考え、スポーツを通じて地域を活性化していくことができるとの価値観を共有しなければならない。これがスポーツ・プロモーションの原点となる。
(2)スポーツを大切にするまちづくり
地域の魅力を外に発信するためには、まちの求心力を高めるための対話の場作りが重要。スポーツによる地域振興を可能とするのは、スポーツを大切にするまちにほかならない。外から人を呼び込む前に、地元のスポーツ大会を盛り上げたり、地域スポーツクラブの自立や拡大を図ったりといったインナー・ブランディングをする。
(3)スポーツ・コンベンションのマネジメント
まちの求心力を高めた上で、遠心力を使ってまちの魅力を発信していく。インナー・ブランディングを進めた上で、アウター・ブランディングとしてのスポーツ・ツーリズム振興に取り組む。
2.スポーツ・コンベンションのマネジメント
スポーツ合宿やイベントなどスポーツ・コンベンションを誘致するためには、シティマーケティングが求められる。岡山市はパラリンピックの事前合宿を誘致しようとしているが、現状では体育館の多くで車いすが使えなかったり,利用調整がうまくいかなかったりするため,施設の整備やより効果的な運用が必要になる。
マラソン大会は全国各地で行われており、地域間競争が激化している。アクセスしやすい、使いやすいなど、施設の活用可能性を高める必要がある。関連消費をしてもらうような誘導方法も考えなければならない。
また、スポーツイベントは外部委託されるケースも少なくないが、“地元産”のコンベンションでなければ地域振興は進まない。外部資源依存からの脱却が大きな課題となる。
(1)SHINJO-HIRUZEN SUPER TRAIL
岡山県新庄村で2016年にトレイルランの大会が開かれた。人口866人の村に、500人を超えるランナーが参加者として来訪。地元産の食材を使った弁当、杉で作ったゴールゲート、アイシング用のヒノキ風呂など、すべて地元でとれたものを地元の人が作って参加者に提供した。地のモノ、地の者にこだわったコンベンションの成功例となった。
(2)岡山シーガルズを日本一にする会(仮称)
バレーボールの国内トップチームである岡山シーガルズの専用練習場(アリーナ)を作ろうと計画し、経済界が中心になって同会を発足した。アリーナ建設により、ナショナルチームや学生の合宿受け入れが大幅に拡大し、ナショナルチームはシーガルズとのトレーニングマッチも可能となる。地域振興に大きく貢献する可能性を秘める。
3.まちとスポーツの自分コト化
(1)おかやまスポーツプロモーション研究会
おかやまスポーツプロモーション研究会が4年前に発足。岡山大学のまちなかキャンパスに、産官学金言のメンバーが集まり、スポーツによる地域振興について話し合っている。対話する場を作ることで、市民の熱が高まる。月1回の開催で、参加費無料、議事録なし、だれでも参加可能というスタイルで毎回40人くらいが集まる。
(2)研究会からのスピンアウト的公式化
研究会で出たアイディア、構築されたネットワークから、さまざまな公式プロジェクトが生まれた。経済界が部活動の外部指導者の謝金等を民間が支援するプロジェクト。Jリーグのファジアーノ岡山、国土交通省岡山国道事務所、岡山大学が共同でスポーツ試合時の渋滞緩和を模索するプロジェクト、パラリンピックの事前合宿誘致を含む障がい者トップスポーツ支援などが動き出している。
4.まとめ
まちとスポーツを自分コト化する対話場からスポーツまちづくりが起動し、そこからスポーツコンベンション・マネジメントが起動する。スポーツコンベンション・マネジメントが次なるスポーツまちづくりを生み出す。このスパイラルを回していく。
岡山での実践経験から、スポーツのことをスポーツの人だけで議論し取り組んでも町は変わらないし、スポーツ自体もよくならないことがわかった。スポーツを専門分野としていない人たちと手を組んでスポーツとまちの未来を考えることが重要。