世界に目を向けても、日本に目を向けても、2014年はスポーツが新たなステージを迎えた1年だった。国際オリンピック委員会は「アジェンダ2020」を発表。未来の国際社会を展望して、オリンピックが今後どうあるべきかを世界に示した。日本でも2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて組織委員会が発足。スポーツ庁もいよいよ設置に向けた動きが固まった。
新たなステージを迎えるにあたり、時代に合わせた「自己変革」が各所で求められている。ここ数年、スポーツ界では、中央競技団体のガバナンスの問題が指摘されてきた。今年も日本バスケットボール協会で自己変革が進まず、国際バスケットボール連盟という「外部の力」に変革を促されることになった。スポーツ庁の発足、それに伴う日本スポーツコミッション(仮称)の設置により、ダイナミックな政策が展開され、各競技組織の改革が進むことを期待したい。
ソチオリンピック・パラリンピックは2020年を迎える私たちに多くの教訓を与えてくれた。多額の投資により建設した施設が今後どのように利用されていくのか。あるいはボランティアが文化としてロシアに醸成されるのか。どのようなレガシーが後世に継承されるか世界が注目している。東京が模範教師的にみる2012ロンドン大会と並び、ソチ大会は反面教師的な部分を含めて学びの多い大会であった。
2014年は1964年の東京オリンピック・パラリンピックから50年という節目の年にあたり、さまざまな機会で1964年が振り返られた。1964東京大会では、社会インフラやオリンピック教育など、ハード面でもソフト面でも多くのレガシーを日本に遺した。また東京大会は日本の文化を世界に発信するまたとない機会にもなった。歴史の教訓を2020年に生かすためにも、50周年という節目に1964年を振り返り、負の遺産も含めて検証したことの意義は大きかったと思う。
スポーツ基本法に謳われる「スポーツの意義」は、国際社会でも強く再認識されている。
笹川スポーツ財団は、研究調査、周知啓発、あるいはスポーツボランティア養成などの活動を通じ、今まで以上にスポーツの意義や価値を「啓発」していかなければならない。
笹川スポーツ財団 専務理事 渡邉一利