現在、教育科学技術部は、2011年の学校体育の施策推進目標として、「興味を持てる体育授業、楽しい学校、共にあるスポーツ」を掲げ、副題に「運動する一般学生、勉強する学生選手育成」をうたっている。一般学生の運動不足対応、著しい運動偏重のエリートスポーツ選手の学力養成を主眼においている。
具体的には、推進施策目標のもと、6つの重点課題とそれぞれに対応する実行課題を挙げており、体系的には以下の通りとなっている。
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
現在、教育科学技術部は、2011年の学校体育の施策推進目標として、「興味を持てる体育授業、楽しい学校、共にあるスポーツ」を掲げ、副題に「運動する一般学生、勉強する学生選手育成」をうたっている。一般学生の運動不足対応、著しい運動偏重のエリートスポーツ選手の学力養成を主眼においている。
具体的には、推進施策目標のもと、6つの重点課題とそれぞれに対応する実行課題を挙げており、体系的には以下の通りとなっている。
これらのうち、主要事業のいくつかを紹介する。(右側の額は2011年度予算額)
※なお、学校体育関連事業はスポーツ・生活体育所管省庁である文化体育観光部関連予算の支援を受けている場合が多い。予算の分担状況を記載したのも、文体部の予算的な裏付けなく学校体育施策を実施できない韓国の現状を読者に理解頂くためである。市道教育庁の予算は、中央政府(教育科学技術部)からの交付金も多く、教育科学技術部・市道教育庁あわせて、教育経統の機関の支出と理解すればよい。地方自治体の支出は、日本の地方自治体の首長部局に概ね相当する支出と理解すればわかりやすい。
※7560+運動 … 「週(7)のうち5日、60分以上運動」のこと。
種目別実技指導書、webコンテンツ、デジタル学習資料等を開発し、教師学生のみならず、学父母等一般人が活用できるように、普及させる。11年度、12年度の2カ年で合計20種目の指導書を開発する。各種目ごとに50百万Wを支給し、10の市道教育庁に分担して開発させる(例:ソウルーバドミントン、釜山―野球など)。
女子学生が好む種目の授業及び完成を引き出すことができるスポーツ環境を再構成し、女子学生が好むラケットスポーツ、ダンススポーツ、レジャースポーツなどの授業を拡大したり、体育教具及び授業資料、女混成授業の方法、体育教具開発等を行うモデル事業。環境(運動場、体育館、健康体力教室等、体育施設配置)のリモデリングや体育教具の具備のとき、女子学生が指向する種目が優先的に考慮される。政策研究等を土台に、研究学校を運営し、1校あたり10百万W×32校を配布する。
小学校にスポーツ講師を配置し、体育正規授業補助及び放課後学校スポーツクラブ活動を支援。1カ月1,766千W×10カ月の契約が基本である。
15年までに2,500名とすべく、11年は1,500名(全小学校5,854校。定員比22.6%)を目標。週当たり21時間を指導することを基本とする。
正規の体育教師と共同で指導に当たり(性別、水準別指導を行うことも想定。)、学期中は放課後学校指導を推奨し、夏季休業中は、「夏休みプログラム」を必ず実施することを義務化している。
スポーツ講師が1以上の学校スポーツクラブを指導するようにして、学校スポーツクラブ大会出場時に、指導教師として積極的な役割を奨励することにしている。なお、2校で1人の配置の場合もある。そのほか、スポーツ講師が再契約を行う場合は、学校と講師双方の希望が一致すれば、現行の在籍校に残ることができる。
現在、一般学生の放課後などでの「学校スポーツクラブ」参加は小学校4年から高校3年までとなっているが、これを小学校2年からに拡大する。そのための選手登録、管理をおこなうためのシステムを開発したりする。
そのほか、「面白くて、身体活動量が多い種目」を中心に、「学校スポーツクラブ大会」を2部制で構成し(1部はエリート選手による運動部活動中心の大会、2部は一般学生のトンアリ活動中心の大会。ただし入れ替え戦がある。)、これに対する開催費補助などを行う。
(韓国では、このほか、少年体育大会、国体などの全国大会がある。また、野球とサッカーは「週末リーグ」が存在する。)
韓国での「総合型スポーツクラブ」とは、主に青少年・成人によるスポーツ同好会の機能と学校スポーツクラブの機能を併せ持ったもので、11年に80か所、15年までに500か所の整備を目指している。これにかかる監督、コーチなどの経費支援を行う。(監督280百万W,コーチ950百万W、指導者教育費80百万W,クラブ運動用品支援80百万W,マニュアル制作、配布14百万W)学生参与率30%以上の機関が優先的に指定される。さらに、こうした「総合型スポーツクラブ」の加入促進、交流機会拡大のため、10種目でリーグ戦を開催する。
前項で説明した、PAPSの実施経費。すでに、小、中では実施されているが、今年度からの高校の実施のための器具等の整備が必要となっている。基本的に各学校ごとに器具を整備することにしているが、小規模学校・財政基盤の弱い学校には、地域の教育庁から器具を貸与して使用することにしている。(管轄高校1校当たり8,230千w、地域教育庁数×30百万Wの積算。)
低所得層・児童青少年にスポーツ講座、及び用品を支援するスポーツバウチャーを交付。
11年度は28,960名が対象。15年度は54,300名への給付を目標。
エリートスポーツ選手の学力低下防止(注:韓国ではエリートスポーツ選手が、エリートスポーツの道を断念した時、学力が身についていなくて進路に迷うケースが多いとされる。)、学習権保障のための支援を行う。具体的には、成績基準(全体平均成績の小学校は50%、中学校は40%、高校は30%)を達成することが求められ、未達の場合、
・国内の競技大会への参加制限(ただし、オリンピックなどの国際大会への参加は可能)
(大会への参加を校長、大会主管機関が、成績条件を満たしているか確認する。)
・学力増進プログラムへの参加を義務付け(学力増進プログラム(60時間以上)を受講した学生選手の場合は、教育監が出欠、学習態度を確認して全国大会への参加を認めるかどうかを判定。)することとなる。
また、
・大学生(メンター)による学習指導を実施
・学習権を保証するため、運動部指導教師やコーチが、こうした趣旨を守るよう、市道教育庁のコーチ管理規定を根拠に、学習権保障をしているかどうかの評価
も行われる。
学校は、こうした制度を受け入れる代わりに
・メンター確保経費(100万W×2名×12カ月)
・学校運動部指導者人件費支援(2,500万W×1名×12月)
・スポーツ科学諮問団運営支援(600万W)
・科学的訓練プログラム開発支援等研究費(1,000万W)
・各種スポーツ施設優先支援(用具、器具、映像分析装備等。1,000万W)
・小中高大、プロチームが連携した進路指導
などの支援を受ける。(8,000万W×12校。)
学校の運動場を現代化(天然芝、人工芝、ウレタン(多目的球場、トラック)、土)し、学生の運動活動を活性化して、地域住民の生活体育条件を改善する09~12年まで4カ年で総計1,000か所の整備を目指している。11年度は119,500百万Wを投入し、300箇所を整備する。
多様な室内スポーツ活動を支援するため、学校内の多目的体育館を建設して、学生、地域住民で共同利用することを目指す。
09年~12年の4年間で毎年25箇所、合計100か所の整備を目指す。
室内体育授業、低体力・肥満学生を対象として健康体力増進プログラム運営、女子学生体育活動等のため健康体力教室を設置する
11年度から15年度まで毎年400教室を設置し、2,000校を支援する。(20百万×400校)
これらの各施策の実施を通じ、主要な政策の数値目標として
・学校スポーツクラブ 学生登録率 27.4%('09)→50%('15)
・身体活動 7560+(週5日 60分以上運動)実践率
13.4%(09')→30%('15)
・学生選手定期授業履修率 69.9%→90%
といった内容が掲げられている。